糖尿病と食事療法~「食べ方」と「食べる量」のふたつに目配り


患者数が働きざかりの40代の1割に達するとされる「糖尿病」。

発症後は完治できないため、一生のつきあいを覚悟せねばなりません。


いちばん恐ろしいのは、状態を放置すると症状が進行し、眼・腎臓・神経などにさまざまな「合併症」が引き起こされることです。

(なお、糖尿病の概要については、関連サイト「糖尿病 3分で知る症状と全体像~治療・食事・予防」をご覧ください。)


糖尿病においては、血液中の糖分(血糖)が異常に高い状態(高血糖)が続きます。

高血糖は、インスリン(膵臓(すいぞう)から出されるホルモン)の働きが低下して起こります。


インスリンの働きにより、筋肉や細胞の「受容体」が糖分を取り込み利用するのですが、過食や肥満・運動不足などにより受容体の働きが鈍るので、せっかくインスリンがでても糖分の利用が難しくなります。


それでも膵臓はインスリンを出そうと頑張って働き続けるのですが、症状が進むと最終的にインスリンをうまく出せなくなってしまいます。


インスリンを効率的に働かせるためには、受容体の働きをよくする必要があるのですが、そのためには肥満・運動不足の解消が効果的です。






糖尿病の食事」の目的は、過食やまとめ食いを控え、受容体の働きをよくすることによって、インスリンが効率的に使われるようにすることにあります。


インスリンの働きにみあった量の食事をとることで糖分を十分に利用することができ、高血糖の防止につながります。

ひいては、膵臓に余分な負担をかけないようになるわけです。


また、現在糖尿病の治療中で薬を服用しているときであっても、食事療法は必要になります。


糖尿病のほとんどを占める2型糖尿病の場合、血糖値のコントロールを薬だけで行うことは困難です。

逆に言えば、適切な食事や運動によって投薬の効果を高めることができるのです。


糖尿病の食事療法のポイントは、その「食べ方」と「食べる量」にあります。


まず「食べ方」ですが、「一日3食をきちんと取る」ようにします。


朝食や昼食を抜いたり、あるいはまとめ食いをしたりすると、一度にたくさんのインスリンが必要になるため、膵臓に負担がかかります。


また空腹状態で食事をすると、体が次の空腹状態に備えて栄養を蓄えようとするため、どうしても皮下脂肪が溜まりやすくなってきます。


食事のスピードは「意識してゆっくりめに、よく噛んで食べる」ようにします。

「満腹感」は、血液中の糖分が増えたことを脳が感知して起きるものです。


食事によって血糖値が上昇し、脳の視床下部にある満腹中枢がそれを感知するまで20分程度かかるとされます。


早食いをすると、血液中の糖分が増えるより先に胃に食べ物が送り込まれてしまいますので、満腹感を感じる前にどうしても食べ過ぎてしまいます。これが肥満につながるわけです。


食べ方という点では、「食べる順番」もぜひ意識しておきたいものです。

さまざまな食品を味わう満足感を得つつ、同時に食事によって血糖値が急激に上がることを避けなくてはなりません。


そのためにまず、サラダや海藻類・きのこなど食物繊維を多く含んだ、血糖値の上がりにくい食品から先に食べることによって、空腹感をある程度解消するようにします。


食物繊維を多く摂取する人はそうでない人に比べて体重が増えにくく、また糖尿病の発症率も3割程度低いことが、米国の研究で明らかになっています。


次に肉や魚などのたんぱく質を、そして血糖値を上げやすいパンやごはんなどの炭水化物は一番最後に取るようにする食順がよいでしょう。

外食と夜食における、食事の量の調整法


次に、「食べる量」にかかわるポイントです。


最近は、ご飯やパンなどの主食を遠ざけて、副食(おかず)をとりすぎる人が多く見られますが、糖尿病の食事療法においては栄養摂取の全体的バランスを鑑み、主食も適量をとるようにします。


主食を減らすことで、おかずをつい食べすぎたり、あるいは間食が増えたりしがちです。

基本的に副食(おかず)は「一食一皿」、しかも種類を毎回変えるようにして下さい。


糖尿病は肥満との相関性が非常に強いので、食事では「炭水化物(糖質)を摂り過ぎない」ことと「食べ過ぎない(太らない)」ことの2点を、絶えず意識する必要があります。


米国の研究でも、食事内容の改善をはかりつつ適度な運動を生活に取り入れて体重を7%減らすだけで、糖尿病になるリスクが6割も減ることが明らかになっています。


最近では、肥満の原因は脂肪よりもむしろ「炭水化物の過剰摂取」にあるとの認識が強まってきています。


しかしご飯やパン類などの炭水化物の摂取を極端に制限する「糖質制限食」は、短期的な成果は出やすいものの、長い目で見ると食事療法としては続きにくい、との声もあります。


日本糖尿病学会も2013年3月に「総エネルギー摂取量を制限せずに、炭水化物のみを極端に制限して減量を図ることは、その本来の効果のみならず、長期的な食事療法としての遵守性や安全性など重要な点についてこれを担保するエビデンスが不足しており、現時点では薦められない。」との提言を発表しています。


日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言(日本糖尿病学会)


一日最低130g程度の糖質摂取」は必要であること、また三大栄養の摂取割合としては「糖質:たんぱく質:脂肪=5:3:2」程度のバランスがよいとされていることを覚えておきましょう。


脂肪については、肥満につながりインスリン抵抗性を引き起こしやすい「飽和脂肪酸」の摂り過ぎを、控えます。

飽和脂肪酸は、バターや牛豚肉の油、乳製品やマヨネーズなどの卵製品、ポテトチップスなどに多く含まれています。


反面、サバやサケ、サンマやカツオなどの魚に含まれる「不飽和脂肪酸(DHAやEPAなどのn-3系脂肪酸)」は中性脂肪の低下や降圧効果をもたらし、インスリンの働きも改善するので、食事メニューには魚料理を積極的に摂りいれたいものです。

食事療法の天敵は、「アルコール」や「間食」です。

アルコールなら、週に1~3回程度の「休肝日」を設けます。


アルコール自体は血糖値を上げることはないのですが、お酒に含まれる「糖質」が問題になります。

ビール系なら糖質ゼロの発泡酒を、あるいはワイン・焼酎などを適量。

日本酒や果実酒は糖分が多いので、控えたいところです。


一日の摂取量については、いま治療をすでに受けている方は医師と相談して決める必要がありますが、予備軍の身としてはせいぜいビール一缶(350ml)、ワイン1杯(120ml)までにしておきましょう。


おつまみ類は枝豆やチーズ・もずくやきのこ料理など、たんぱく質や食物繊維が豊富なものをバランスよく配します。

ちなみに飲酒後にラーメンやざる蕎麦などの炭水化物をとっては、せっかくの努力が水の泡になるのでご注意を。





また、すべての食事には必ず野菜をつけあわせるようにしたいものです。

野菜の食物繊維が、食後に血糖が急激に上がるのを抑えてくれるからです。


野菜がない場合、(できれば食塩無添加の)野菜ジュースで代用するのもよいでしょう。


とくに外食が多い方の場合、気をつけてほしいのは「腹八分目、出された量の一定割合を意識して残すようにする」ことです。


外食が主体だと、どうしても栄養バランスをとるのが難しく、またカロリーオーバーにもなりやすいためです。


注文の時に「ご飯を半分に」とか「サラダにはドレッシングをかけずに」など、自分なりの注文を出すようにします。


お店にちょっと言いにくい…という方は、あらかじめ事情を汲んでくれる、食事療法を守りやすいような「いきつけのお店」をいくつか確保しておくと良いでしょう。


当然ながら、高カロリーで栄養バランスが悪い単品の食事メニュー(カツ丼やファストフード類)は、避けるようにします。


食事に合わせてコーラやジュースなどソフトドリンク類が欲しくなるかもしれませんが、多量の糖分を含むだけでなく、中性脂肪を増加させ肥満につながるので、極力摂らないようにします。


最近はメニューにカロリー表示を併記しているお店も増えてきていますので、注文前にはメニューの記載カロリーをチェックするくせをつけましょう。


ちなみに、スーパーやコンビニでよく見かける加工食品ラベルに示されている「栄養成分」は、「健康増進法」という法律の「栄養表示基準制度」にもとづいています。


使用する素材や調理の仕方などによってもカロリー量は簡単に変動するため、この基準では「±20%までの表示誤差」が認められています。


たとえば、外食時にレストランのメニュー上で「500kcal」と表示されている一品が、実際は600kcalくらいのカロリーである可能性は十分ありますし、それ自体は表示上の違反でもないわけです(そもそもカロリー表示自体、法律上義務づけられてはいません)。


利用者側で個々の食事や食品のカロリー表示の正確さをチェックする術はまず無いので、この際はじめから「食品ラベルや外食時のカロリー表示は2割増」くらいに考え、固めの数字で計算することを習慣づけておくほうがよいでしょう。

見た目にかさが多くカロリーが少ない野菜やキノコ類・海藻・コンニャクなども、積極的に食材に取り入れたいもの。


また、みそ汁やスープなど水分の多いメニューもお腹をいっぱいにしやすいので、なるべく取り入れたいものです(ただし塩分の取り過ぎに注意。過度の塩分も糖尿病の大敵です)。


魚などはお頭つきの方が、食べるのに手間がかかる分、早食いを避けられてよいでしょう。


サラリーマンが特に注意すべきは、一日の仕事から解放された後の「夜食とアルコール」のコントロールです。


もともと人間の身体は、「あとは寝るだけ」の夜間には、とったカロリーがそのまま体に蓄積されてしまうようにできているからです。


食事にアルコールがからむと、胃液分泌も促進されて食も進み、どうしてもオーバーカロリーになりがちです。

お酒のみの方は、「ビール中瓶1本=ご飯茶わん1杯分のカロリー」と、おぼえておきましょう。


女性でアルコールをとらない方は、「果物」の糖分に気をつける必要があります。

リンゴ1個=ご飯茶わん1杯分のカロリー」です。


夜が外食の場合、ルールを簡単にして「出されたものはすべて、3分の1を残す」と決めておくのも一方法です。

残すことに罪悪感を感じる方は、自宅での夕食を習慣づけるようにしましょう。

食事のカロリー計算と、糖尿病によいとされる食べ物


すでに糖尿病でより細かな食事管理の必要のある方は、日本糖尿病学会が編集した 糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版 を、手もとに置いておくといいでしょう。


すでに合併症が起こっている場合も含め、発症後の食事療法は、塩分や脂質の摂取がより厳しくなるからです。


この本には「80キロカロリーに相当する食品の量」が示されているため、カロリーの計算がしやすくなっています。


ちなみに、一日に必要なエネルギーは「標準体重(身長m×身長m×22)×25~30kcal」で求められます。

身長が165㎝の場合は、1.65×1.65×22×25~30=1,500~1,800kcal/日といった具合です。


カロリー計算や献立を考えたりするのが面倒…という方は、「糖尿病食の宅配サービス」を利用するのも一法です。

たまに利用してみることで、一種の気分転換にもなります。





糖尿病食はそれ自体が、栄養バランスと塩分・カロリーなどが適量に計算された食事ですので、糖尿病を患っていない人にとってもヘルシーです。


家族の誰かが糖尿病である場合は、たとえ週に数回程度でも家族で同じメニューの糖尿病食をとるようにすると、患者の生活改善に向けた意識を、家族みんなで共有できることでしょう。


できれば、「この食品・食事は、一人前のカロリーが大体これくらい」という事を自分で直感的にわかるようになっておくと、外食のときも一日の摂取エネルギーのコントロールがしやすいでしょう。


最初はたいへんであっても、自分自身でカロリー計算を行うくせを身につけておくと、主なメニューのカロリー数は知らず知らずのうちにおぼえていくものです。


現在治療中の方は、発熱などで体調がすぐれず、何日も食事をとる気が起きないときもあると思います。


このような場合、だからといって何もとらずにいると、水分不足で血糖値が上昇し意識がもうろうとする「糖尿病昏睡」を起こすときがあるので、注意が必要です。


食欲のないときは脱水症状を起こさぬよう、適量のおかゆなどを取るとよいでしょう。


また食事をとらないことが何日も続いた場合、処方された糖尿病の治療薬をいつもどおり飲み続けていると、低血糖を起こす可能性があるため、薬の服用量の調節が必要になる場合があります。


糖尿病の薬には、薬の効果を引き出すため、「食事の直前」など服用タイミングがはっきり決められているものもあります。


このように投薬治療中でありながら、日々の食事の量や回数が大きく変わるようなときは、担当医に相談のうえ対処するようにしましょう。

低血糖糖尿病の薬物療法については、関連サイト「糖尿病の薬とその種類 基本が知りたい」をご参照ください。)



最後に、糖尿病によいとされる食べ物について、いくつか触れておきます。


「カボチャ」は、昔から糖尿病によいと言われています。

軽い糖尿病なら、一日にティースプーン2杯程度のカボチャの粉末をとると効果があると言われています。

カボチャの粉末は健康食品としても売られているので、利用する場合はこちらのほうが手軽でしょう。


また、「ドクダミ」も体の新陳代謝・インスリンの分泌を高めるため、糖尿病によいとされます。


もちろんこれらの食品を単独でとればよいというものではなく、上で述べたような食事療法の基本を守り、きちんと一日三食をとる中で、サプリメント的に利用するのがよいでしょう。


なお糖尿病の食事療法を末長く続けるための具体的なコツや方法をさらに身につけたい方は、姉妹サイト「「糖尿病の食事 効果的に続ける方法」も、あわせてご参照ください。



糖尿病に関する参考サイト



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